INTERVIEW耳が聴こえない手話パフォーマー・中嶋元美さんがハンデを乗り越えて活躍する理由とは

耳が聴こえない手話パフォーマー・中嶋元美さんがハンデを乗り越えて活躍する理由とは
2018.08.23

SHOWROOMで目覚ましい活躍を見せた演者のインタビュー連載。今回は耳が聴こえず、手話や筆談で配信を行っている中嶋元美さん。配信を始めたきっかけや、今後手話パフォーマーとして伝えていきたいことを語ってもらった。

とにかくよく笑い、笑顔が素敵な中嶋元美さん。
「耳が聴こえない」という事実をつい忘れてしまうほど。

彼女は高校1年生の春に、「耳がまったく聴こえなくなった」という。

しかし、
「耳が聴こえていた時よりも、
現在(いま)の方がよっぽど明るいんです」と話す。

インタビューでは、ろう者になってから抱いた夢やSHOWROOMを始めたことによる変化、今後の展望を教えてもらった。

耳が聴こえなくなってから学んだ手話。自分の言葉というものを手に入れたことが自信に繋がった

 

元美さんは手話や筆談でのSHOWROOM配信が話題となっています。まず配信をしようと思ったきっかけから教えてください。

『LARME』という甘めテイストの女性ファッション誌があるのですが、毎号買っているほど大好きな雑誌で。『LARME』の読者モデルになりたくて応募したら書類審査は合格して、二次審査がSHOWROOMでの配信だったんです。そこで初めて存在を知りました。まわりの友達に聞いたら何人か既にSHOWROOMで配信している子がいたので色々教えてもらって。それで「私もやってみようかな」と。

 

やり始めてみて、どうでしたか? 不安などはなかったのでしょうか。

筆談をすれば文字でコミュニケーションが取れるので、耳が聴こえる・聴こえない……というのはあまり関係なく、楽しく配信しています!

最初はホワイトボードで書いていたのですが30分くらい書いていると手が真っ黒になってしまうし、ベッドの上で配信しているんですけど、ボロボロと黒いカスが落ちてきてベッドが汚れるしで、やめました(笑)。それでノートに変えて。ノートは記録にもなるし、途中で配信を見に来た人にも後からまた見せられるのでいいですね。ホワイトボードだとその都度消さないとならないから。

 

今までの配信で、ノートは計何冊くらいになりました?

97冊です!

 

すごい量(笑)この記事が配信される頃にはきっと100冊超えですね。

相当な量の文字を書くので、一度腱鞘炎にもなりました(笑)。あと、リスナーさんがノートとペンを大量に贈ってくれるのが嬉しいです。一番書きやすいのが無地良品のもの。可愛いデザインのノートとかもたくさんありますけど、見た目にこだわっても結局配信では中面しか見せないので、書きやすさ重視です。これもたまたま配信でお話したら、そのあとから無印良品のノートとペンがたくさん届きました。

 

それはありがたいですね! 元美さんが配信でこだわっていることはありますか?

普通にすること、ですかね。「ろう者だからこうあるべき」ということではなく。あと、「スマホとかで文字を打った方が早いんじゃない?」と言われることがあるのですが、やっぱりアナログな文字の方が気持ちって伝わりやすいのかなと思って自分の字で書くことを大事にしています。書くのは人より早いんです。SHOWROOMを始めてから特技だと気づきました(笑)。

 

 

SHOWROOMを始めてから変化したことなどはありますか?

耳が聴こえなくなった7年ほど前から「手話あいらんど」という「事務所の手話パフォーマンスきいろぐみ」のメンバーとして活動していて、年に数回LIVEを行っているのですが、SHOWROOMを始める前はお客さんのほとんどが手話関係者の方だったんです。でも、配信をし始めてからいわゆる“手話ワールド”の外の方々が来てくれることが増えました。

 

LIVEってどんなことをするんですか?

手話を通して歌ったり、踊ったり……。手話や“ろう者”ってどうしても真面目だとか、お固いイメージがあるんですけど、「そんなことないんだよ!」ということを伝えたくて。聴こえる人も聴こえない人も楽しめるような演目にこだわっています。場所も渋谷のライブハウスでやったりとか。

 

今年の3月にも「デフ・バースデー」という、“私が耳が聴こえないろう者として生きることを決めた日を祝う”というLIVEを開催したのですが、普通のアイドルと同じようにペンライトを持ってもらったり、グッズを作ったりもしましたね。音声通訳をつけることもあるんですけど、この時は筆談をスクリーンに映し出してやりました。その方が自分の言葉でちゃんと伝えられるので。会場の様子をSHOWROOMでも生配信しました。

 

LIVEといえば、以前ももいろクローバーZの佐々木彩夏(あーりん)さんと手話共演したことも話題になりましたね!

はい。あーりんさんがソロコンサートで「手話付きの楽曲に挑戦したい」ということで、手話指導のオファーをいただいて。すごく楽しかったです。

 

今後、共演したいアーティストさんはいらっしゃいますか?

ゴールデンボンバーさん!自分のLIVEでもゴールデンボンバーさんの曲で踊りをやらせていただいたんですけど、やっぱり盛り上がりますね。

 

結構、元美さんが踊る曲はアップテンポなものが多いですよね。

はい。バレエをずっと続けているのですが、耳が聴こえる時はクラシックをよく聴いていたんですけど、聴こえなくなってからロックが大好きになりました。しかもハードロック(笑)。

 

 

それは何故なんでしょう。

ロックって、音の振動がすごいじゃないですか。音楽を体で感じられる。LIVEに行っても照明の演出や映像を観ているだけでもすごく楽しいんですよね。特にhydeさんが好きなんです。照明や映像のこだわりや遊び方がすごい。hydeさんのLIVEを観てから、「自分もやりたいと思ったことをやってみよう」と思うようになりました。否定するわけではないですが、ろう者だからゆっくりな唱歌ばかり歌うと思われがちなのです。実際はそうでもないんですよね。

 

ろう者の方と実際に触れ合ったことがない人にとっては、真面目なイメージがあるかもしれないですね。

手話をする人と直接お話する機会って、なかなかないと思うんです。SHOWROOMリスナーさんのコメントでも、「こんなに明るいんだ!」とか「筆談してちゃんと会話ができるんだ」とか、「表情が豊かだね」と言われます。手話を多くの人に知ってもらえるきっかけになったと思います。手話がすごく特別なものではなく、英語と同じで他言語のような感覚になってもらえたらな、と。

 

確かに元美さん、すごく明るいしよく笑いますよね。元々明るい性格なんですか?

全然。超暗かったです。

 

意外ですね!

高校1年生の春に、突然聴こえなくなったんですが、その前から難聴ではあったんです。今思えば幼い頃からそうだったんですよね。自分が難聴だってわかったのは中学生の時に聴覚検査を受けた際、お医者さんに言われて。それまでも耳鳴りがずっとしていたんですが、みんなも同じだと思っていました。

それで補聴器は付けていたんですが、すべての声を拾えなくて、友達の会話に付いていけず……。でも、聴こえるフリをしてたんです。みんなが笑ったら合わせて笑ってみたり。だから自分の意見も言えないし、すごく暗かったですね。『ちびまる子ちゃん』の野口さんみたいな感じです(笑)。

それでまったく耳が聴こえなくなってから、どうやって今のような明るさを得たんでしょうか。

マラソン大会の練習中に突然めまいがして倒れて、翌日目覚めたらもう耳が聴こえない状況で。その時は“今”に対して一生懸命で、未来は見えない状態でした。その1カ月後に、母から「きいろぐみ」という手話パフォーマンスの団体があるということを教えてもらって。でも聞いた時は、「ふ〜ん」くらいで(笑)、いきなり「これだ!」というふうにはなりませんでした。

興味はあったので体験会に行ってみて、そこで初めて“生きた手話”というものを観て、「自分もやってみたい」と思えたので入って。それでもすぐに前向きになったということはなかったんですけど、1年くらいたった時にいきなり明るくなったんです(笑)。

 

特にきっかけはなく? 継続してきたことの積み重ねなんですかね。

きっかけみたいなものは特にないんですけど……。多分、手話を習得してから自分に自信がついたんだと思います。それまでは、わからないものをわかるフリして我慢していた人生だったけど、初めて“自分の言葉”というものを見つけられた、と感じました。今までは話しかけられてから人と話していたんですが、自分から積極的に話しかけるようにもなって。すごくポジティブ思考になりました。

水中で使ったり、声が届かないほど離れた場所でも見える手話って、実はすごく便利。もっと有名になって、手話の魅力を伝えていくのが夢

それで「手話パフォーマンスきいろぐみ」に入られてからずっとエンターテインメントの仕事をされているわけですが、そこで元美さんが伝えていきたいこととは?

手話の魅力をもっと伝えていきたいです。先ほども話しましたが、どうしても真面目なイメージがありますよね。手話を覚えることで「助けてあげなきゃ」とか「優しい心を持たなきゃ」というような。もちろん、いじめたりしてはいけないんですけど、もっと他にメリットってたくさんあるんですよ。例えば、LIVE会場などの音がうるさい場所や遠く離れていて声が届かない場所、水中、風邪で声がでない時…とか、会話がしづらい、できない場所でも活用ができるんです。ちなみに私は学校の授業で、先生が黒板の方を向いた瞬間、手話で先生の悪口を友達に言ったりしてましたよ(笑)。まあ、これはあまりいいことでないですけど、要は内緒話ができたりもするんです。

 

確かに! そういう風に改めて考えるとハッとさせられますね。

手話は視点を変えれば、聴こえる人にとっても便利なんですよね。それを伝えていくためにも、もっと有名になりたいです。日本で手話パフォーマーとして有名になっている人ってあまりいない気がして。海外では手話をアートと捉えた手話パフォーマンスの団体がもっとたくさんあるんですよ。

 

なるほど。新しい文化として築いていけるといいですよね。今後具体的に叶えたい夢や、目標はあるんですか?

いつか武道館で手話LIVEをやってみたい!夢は大きく持っていたいです。あとは女優としても活動してみたいですね。ミュージックPVやCMなら、音声の演技ではなくできるので。

SHOWROOMでやってみたいことはあります?

2画面にして、手元を映すカメラと自分を映すカメラがあったら便利かな〜と。ちょうど下を向いて書いている時にルームに来たリスナーさんは、「なんだろう」と思って離脱しちゃうので。やっぱり、声で配信できる人と比べるとまだまだ足りないものがある気がしていて……。どうやったらもっと楽しめるかというのは研究中です。

 

元美さんのようにチャレンジしていけたらいいのですが、中には、例えばSHOWROOM配信を始めたくても“自分にできるか不安”とか、“勇気がない”と二の足が踏む方もいると思うんですね。そんな人達にアドバイスがあればお願いします。

悩んでるくらいならやったほうがいいし、一歩踏み出してみないとわからないことってあると思うんです。夢って口にするのはとても簡単なことだけれど、すぐに掴めるわけじゃないしやっぱり努力が必要。本当にやりたいのであれば一生懸命やるべきだし、限界までやってみることが大切なのかな、と。それでダメだったら諦めもつくし、後悔したとしてもいい後悔だと思うんです。その経験が次に繋がるかもしれないですよね。

 

ありがとうございます。演者のみなさんには共通で聞いているのですが、元美さんにとって、SHOWROOMとは一言でいうとどんな存在ですか?

“自分を表現できる場所”ですね。耳が聴こえない人の役のオーディションはあっても、それ以外で外に出ていけるチャンスってなかなかないんです。でもSHOWROOMで配信することで、みんなに知ってもらうことができる。チャンスが平等になる。そこが魅力です。

 

ありがとうございます!では最後に、ファンのみなさんへメッセージをいただけたらと。

SHOWROOMリスナーのみなさんは、ファンというより意見も言い合える“仲間”です!いつも時間を調整してまで観に来てくれるのは本当に嬉しいです。音はない配信ですけど、筆談もしてるしコメントもたくさんくれるし、映像の印象はきっと“うるさい”くらいだと思います(笑)。みんなが応援してよかったなと思ってもらえるようにこれからも頑張っていきたいと思います!

編集から
ファッションも音楽も大好きで
ハンデがありながらも
自分のことにどんどんチャレンジしていく姿は、ありがちな言葉ながら勇気をもらえた。

“私なんか……”“自信がない……”などと言ってる場合ではないな、と。

「小さい頃からバレエを続けてきた」という元美さんに、撮影時にちょっとだけ踊りを披露してもらった。
しなやかで美しく、話している時の“動”な
雰囲気とは違って“静”な気配を漂わせていた。

「もっと有名になりたい!」と語っていた彼女。
今後手話パフォーマーとして、表現者として、さらに活躍していく姿を期待したい。

元美さんがもっとわかる!一問一答

Q.最近ハマっていることは?北海道のゆるキャラ“アックマ”です!
ギターを本当に弾くんですよ。ロック好きとしてはたまらない可愛いキャラなんです。

 

Q.長所は?

ポジティブなところと自分に自信があるところ……。あとはバカなところ(笑)

 

Q.では短所は?飽きっぽいところ。
でもそんな私には珍しく、SHOWROOMは毎日配信していても飽きないです!

 

Q.休日は何をしていますか?ディズニーランドに行く。
週1〜2日行くほど好きです。年間パスポートももちろん持っています。

 

Q.行ってみたい場所は?アメリカのディズニーワールド!

 

Q.座右の銘は?“誰よりも誰よりも私らしく、つまずいても微笑んで立ち上がる”
Sugarさんの曲、『ひまわり』に出てくる歌詞です。とてもいい言葉。夏生まれの私にぴったりです。

 

Q.ショッピングはいつもどこでする?渋谷109や原宿ラフォーレ。
色はピンクが好きだったんですが、最近はシックで大人っぽい雰囲気も好き。昔はロリータファッションでした……。私の黒歴史です(笑)。

 

〈撮影=河野マルオ/取材・文=広瀬蒼乃〉

 

【INFOMATION】

元美さん出演!ミュージカル「白い森 黒い森」
手話パフォーマンスきいろぐみ
ファミリー手話ミュージカル2018
「白い森 黒い森」

【日時】
2018年8月25日(土) 全2回公演
★ 第1回公演
11:00開演~約2時間(開場10:30~)
★ 第2回公演
15:00開演~約2時間(開場14:30~)

【チケット料金】
大人(中学生以上)  前売り3,500円 / 当日4,000円
子ども(4才~小学生)  前売り2,000円 / 当日2,500円
3才以下  無料

※乳児も入場OK。できるだけおひざの上で!
(途中泣いたら、ロビーで少し休憩してください)

【会場】
横浜市港南区民文化センター
『ひまわりの郷』ホール
Tel:045-848-0800
〒233-0002
横浜市港南区上大岡西1-6-1 ゆめおおおか中央棟4F
(京急・市営地下鉄  上大岡駅より直結)

詳しくはHPを参照ください
http://kiirogumi.net/musical2018/

 

中嶋元美

中嶋元美

1994年8月18日生まれ。愛称はもっちー。高校1年生から耳が聴こえなくなり、手話あいらんど『きいろぐみ』に所属しステージ活動を始める。現在は舞台やLIVE出演の他、手話教室講師、ドラマや映画の手話指導等なども行う。


SHOWROOM
https://www.showroom-live.com/room/profile?room_id=118171
Twitter
https://twitter.com/pinklovemoto
広瀬蒼乃

広瀬蒼乃

出版社でファッション誌や旅系の雑誌編集を経て、フリーランスに。可愛い子探しと、不摂生な生活を送りながらも健康ネタ集めと実践することが好き。昨年より念願の鎌倉暮らしを実現。

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