INTERVIEW「華が最初からある奴なんていない」奇才・福田雄一監督に“才能とは何か”を聞いてみた

「華が最初からある奴なんていない」奇才・福田雄一監督に“才能とは何か”を聞いてみた
2018.12.13

今回は、次々とヒット作を生み出している福田雄一監督にインタビュー。夢を叶えるために必要な“才能”について話を聞いてみた。

「コメディの奇才」と言われ、数々のヒット作を生み出している脚本家、演出家、映画監督……とさまざまな肩書きを持つ福田雄一さん。

映画好き問わず、「福田監督の作品が好き」「福田監督のファンだ」という声は本当によく聞く。
「福田監督の作品なら間違いなく面白い」といっても過言ではない。
そんな風に突出した監督はなかなかいないのではないだろうか。
そして福田監督は、多くの個性派俳優を抜擢しその魅力を引き出し、人気俳優を輩出してきたことでも知られる。

そこで今回ぶつけてみたテーマは、

「才能」ってなんだと思いますか?

SHOWROOM Magazineで俳優やアイドルを目指した演者たちにインタビューを重ねていく中で、「私は才能があるタイプではないので、努力をしないと勝てないんです」と話す方がたくさんいた。だが、そもそも才能とはなんだろうか。

そんなふと沸き上がった疑問を福田監督にぶつけてみた。

「ムロくんは、常に自分に華をくれる人付き合いをして開花したんだと思う」

第一線で活躍するいろんな役者さんたちとお仕事されている福田監督にお伺いしたいのですが、どんな人が「才能がある」と思いますか?そもそも「才能」ってどんなことをいうのでしょう。

う〜ん、才能っていうのは、何か規定のものがあるジャンルに関してのみ、言えるもんなんじゃないですかね。

例えば歌でも、「うまい」「へた」って絶対にあるわけで。 どんなに個性的に歌っても、音感や音程のセンスや“正しさ”というものは存在する。堂本剛くんとか、いつも歌聴いてても「天才だな〜」と思う。絵画でもそう。崩した絵を描いてる画家たちに、「写実的な絵を描いて」と言ったらみんな描けると思うんですよ。そのうまいとかへたとかはもう、才能としか言いようがない。

 

ピカソもそうですよね。初期はかなり写実的な絵を描いていました。

そうそう。そういった規定のものがあれば、才能があるとかないとかがありそうだけど、演技に関しては規定がないので、そこに対して“才能”と言われてもピンとあまり来ないですね。逆に言うと可能性は無限だから。さまざまな才能が存在していいジャンル。SHOWROOMの配信者にはアイドルを目指す子もたくさんいると思うのですが、アイドルが持つべき才能って、逆になんだろうって思います。どんな才能でもいいわけだから。

 

醸し出すオーラでしょうか?

でも、オーラなんてついてくるものだと思うんですよ。僕はずっと、「華はもらえるものだ」と思っていて。

 

なるほど。どうやったら華をもらえるようになるんでしょうか。

人との関わり方が大事だと思うんです。自分が目指す高みのものがあるとすれば、そこに近づく“上を向いた人付き合い”をしていくと、そういう華がついてくる。その努力は必要だと思う。でも、努力を努力としてやるのか、意識せずにやるのかで大きな違いがあって。「やらなきゃいけない」「頑張らなきゃ」と思いながらやっていても身につかないと思うんですよ。

例えばムロツヨシくんなんかは、売れるずっと前から売れている俳優さんたちと仲良くしているんだけど、そもそもムロくんは人付き合いが元から好きなんですよね。それでいろんな人と付き合っていく中で、ちょっとずつ華をもらっていったんじゃないかな。だってムロくんは若い時の顔とか見ると全然華なんてないじゃないですか(笑)。

 

(笑)。でも、今大ブレイクしていますよね。楽しみながら、好きで努力することが大事ということでしょうか。

そういう華ってひとつポンってひっくり返ったら一気に華開くもの。努力しなきゃと思ってるといつまでたっても華は開かない。楽しくやってると自然と身についてくるのかなと。

咲くまでは時間がかかっても、ひとつ咲いたら一気に満開になるというイメージでしょうか。

例えば指原(莉乃)は最初から洗練されていたわけじゃないし、デビューした頃の写真を見ても、ハッキリ言って微妙じゃないですか(笑)。

でも彼女はすごい上昇志向があって、計算高いところもあるけど計算高さが“天然”なんですよ。「私は計算高くいこう」とは思ってない。これは僕の想像ですけど、付き合う人を選ぶとか、こういう風にすれば生き残れる……というのを考えるのが好きなんじゃないかな、と思う。

 

確かに、以前指原さんに取材した際にも、テレビに出たり売れるために「特別な何かをしたわけではない」とおっしゃってました。

そうですね。アイドルという職業、タレントという職業が天然で大好きなんだと思う。まあ、女優をやるのは大嫌いらしいですけど(笑)

 

(笑)。

でも、僕も役者さんと仕事する時、その役者さんが好きだからキャスティングするわけで。そういう役者さんと仕事すると何かしらもらえるし、何かを身につけていくってそういうことじゃないかなとは思います。

「アメリカで通用するか」が作品づくりの基盤に

福田監督はここ数年だけ見ても『銀魂』や『斉木楠雄のΨ難』、最近ではドラマ『今日から俺は!』など、ヒット作を出し続けているイメージがあります。伸び悩んだ時期とかはあるんですか?

伸び悩んだ時期は……ないですね。なぜなら伸びようと思ったことがないから。

 

え、そうなんですか!?

監督として偉くなりたいとか、ポジションを得たいと思ったことないですね。ただ、本当はやりたいことがあるのに予算が足りないからできないとか、出てほしい役者さんが出てくれないというのはすごく嫌じゃないですか。だから、自分がやりたいことに制限がかからないようにフィールドを広げていきたい、という想いはあります。

 

では、賞を穫りたいという気持ちもあまりないのでしょうか?

賞には興味ないですね。基本的に「あいつはダメだ」って言われ続けたいという欲求が強いから。「あいつの作品は、くだらねえ」と。それに対して負け犬の立場でワンワン吠えてるのが大好き(笑)。ただ、結果をある程度出したことによって、「いや、福田さんの作品はちょっと……」と昔は言っていた事務所さんが振り向いてくれるようになったかなという感覚はあります。そっちの方が大事です。

 

では今の目標や夢は何かと聞かれたら、何でしょう?

アメリカに行きたい!

 

それはお仕事でということですよね?

もちろん仕事で、ですよ(笑)。アメリカで挑戦してみたい。これはずっと抱いている夢ですね。

 

具体的に何か動いていることはあるんでしょうか?

全っ然ない!!!(笑)。

 

(笑)。

まだまだ、全然ですね。ハリウッドいくために賞が必要だったら狙いますけど、そういうことでもないですし。それよりハリウッドはエンターテインメント性のあるものをどれだけ作れるか、ですよね。作品づくりをする上で、「アメリカの人が観ても面白いと思えるもの」という視点はずっと持っています。

そうなんですね。あちらのプロデューサーに目に触れる機会があれば、実現しそうですけど。

それこそ『33分探偵』や『勇者ヨシヒコシリーズ』はぜひハリウッドの人に観て欲しいって言い続けた。そのために僕は英語を覚えないといけないのですが……。非常に遠い道のりですね。

 

現代だとYouTubeなどSNSは世界に広げるツールだったりはしますが……。

映画『デッドプール』の続編で、監督が降ろされたという話を聞いてTwitterで「わりと向いている監督ここにいますよ」ってつぶやいたんですけどね。メッセージ届かなかったな(笑)。

 

目標にしている監督さんはいるんですか?

マシュー・ボーンが圧倒的にNo.1ですね。「勝てね〜な」って思っちゃいます。だって『キックアス』の次に『キングスマン』ですよ。ヤバくないですか! すごい僕が好きなセンスなんです。本当にマシューの映画は面白い。アイツがいる限りはハリウッドに進出できないなあ(笑)。

 

アイツ(笑)。

でもアイツがいなくなったらなったで寂しい。

 

本当に大好きなんですね。日本の監督さんで尊敬している監督さんはいるんですか?

ずっと目標にしてるのは、山崎貴監督ですね。

 

山崎監督のどういうところが好きなんですか?

『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0(ゼロ)』、『寄生獣』とジャンルは全然違っても、すべてエンターテインメントに徹しているところですね。CGも第一人者ですが、常に進化させているし、観る側をちゃんと夢の世界へ連れていってくれる。そういう姿勢は見習わないといけないな、と思っています。

自分が手がけた舞台をきっかけにミュージカル好きを増やしていきたい

監督が作・演出を務めた12月から公演が始まるミュージカル『サムシング・ロッテン!』についてもお話を聞かせてください。コメディミュージカルということですが、映画と舞台で演出を変えていることはありますか?

それはもう、全然変えますね。舞台ってコメディである以上は目の前にいるお客さんを笑わせなければいけないので、非常にわかりやすいセリフを選んでます。映画の場合はお客さんの前に立つわけではないので、確実に笑いが伝わる必要性がないんですよ。観た時にわからず「ん?」と思っても時間がたってから「あれ面白かったな」と思ってくれても全然構わない。まぁ、『銀魂』や『勇者ヨシヒコ』みたいな映画やドラマはビビッドに笑いが伝わった方がいいというのはありますけど。

それに映画やドラマは面白いシーンにぐぐっと寄ってくれる。それに比べて、舞台は広いし、お客さんの目線は常に同じないので、そのぶん情報処理に時間がかかるからわかりづらいんですよ。だから面白いことを言った後に丁寧にツッコミを入れて、わかりやすくしていますね。

 

なるほど、「面白いこと言った」という情報がすぐに届くので観客からしても笑いやすい。『サムシング・ロッテン!』はあらすじなどを拝見しても、普段はミュージカルを観ない人も楽しめそうな作品のように感じました。

そこは常に意識していますね。でも実際、今回の演目はミュージカルが好きな人が観るような原作ではあるんですよ。キャスティングもミュージカルに精通している人たちばかりですし。それでもミュージカルに触れたことがない人が「面白い!」と思ってくれるような台本にはしています。

ミュージカル好きも、普段観ない人もどちらも楽しめそうですね。では最後にミュージカルの見どころを教えてください!

とにかくこれを観たあとに「ミュージカルって楽しい!」と思ってほしいんです。俳優の井上芳雄くんともよく話しているんですけど、日本でもっと幅広い年齢層にミュージカルが広がるように普及活動していきたいんですよ。ひと昔前よりはマシだけど、まだまだ敷居が高いイメージがあると感じていて。どうしても「お金持ちのおばさまたちが観るもの」という印象が拭えていない気がします。

 

気軽に観にいくものではないと思っている人は多いかもしれないですね。特に男性に多い気も……。

年配の女性たちがめいっぱいオシャレして観に行く……という風に思ってる人もいるかもしれないけど、ミュージカルってもともと、「オペラってなんか堅苦しくね?」ということで始まったものじゃないですか。ブロードウェイのミュージカルなんて観に行くと、開演前から酒飲んで、休憩中も飲んで、みんなベッロベロに酔っぱらっていますよ(笑)。もはや宴会に近いですよね。日本でも若い子からおじいちゃんおばあちゃんまで、そんな風に自由に観て欲しいんですよね。

 

NYブロードウェイのミュージカルを観にいったことあるのですが、確かにみんなもう少し気軽に見に来ている雰囲気でした。

そうなんです。『サムシング・ロッテン!』は、シェイクスピア全盛期に、イギリスからアメリカにミュージカルを持っていく……という話の流れになるんですが、とにかく「ミュージカルって楽しいよね!」ということを終始言ってるような内容なんで、一度観に来てくれれば、ミュージカルの魅力が伝わるんじゃないかと。「福田さんのミュージカルが面白かったから、またミュージカル観に行きたいな」という気持ちが芽生えてくれたらうれしいですね。

 

架け橋的な存在というか、一つのきっかけになればいいですよね。

はい。いい循環が生まれてくれるといい。それをすごく僕は願っています!

 

編集から「オーラや華は、あとからついてくるもの」。
多くの俳優と仕事をしてきた福田監督の言葉だからこそ、説得力がある。
才能があるとかないとか、結論は誰もわからない。
ひたすら上を向いて、突き進むしかない。
そして何より楽しむこと。
「福田組」がいつもキラキラ輝いて見えるのは
努力を努力としてやるのではなく、現場を楽しんでいるからだろう。
果たして、自分にはそれができているのだろうか?
あらためて考えさせられるインタビューだった。

〈撮影=瀬津貴裕(biswa.)/取材・文=広瀬蒼乃〉


ミュージカル『サムシング・ロッテン!』公演概要
■演出・上演台本:福田雄一
■出演: 中川晃教 西川貴教 瀬奈じゅん 平方元基 清水くるみ 橋本さとし ほか
■会場・期間:
東京/東京国際フォーラム ホールC  2018.12/17~30(全19公演)
大阪/オリックス劇場 2019.1/11〜14(全6公演)
■オフィシャルwebサイト: http://www.something-rotten.jp

〈story〉
ルネサンス時代のイギリス。売れない劇作家であるニック(中川晃教)は弟のナイジェル(平方元基)と共に自身の劇団を運営していた。スーパースターの劇作家シェイクスピア(西川貴教)にニックは対抗心を燃やし、ノストラダムスのもとへ助言を求めて通うが、ヒット確実な作品タイトルは「オムレット」(実は「ハムレット」の間違い)だと言われ、ニックはミュージカル「オムレット」を生み出すために苦戦する。一方、「ロミオとジュリエットに続く大ヒット作を書かねば」と人知れず思い悩んでいたシェイクスピア。以前からナイジェルの才能に目を付けていて、彼からなんとか自作のアイデアを得ようとする。ニックの劇団になんとかして潜り込むことに成功し、後のヒット作になる「ハムレット」の土台となるアイデアをどんどん盗んでいくが……。

 

 

福田雄一

福田雄一

ふくだ・ゆういち。1968年生まれ。成城大学在学中に結成した劇団「ブラボーカンパニー」の座長。主な作品にドラマ「勇者ヨシヒコシリーズ」「今日から俺は!」、映画「銀魂」「斉木楠雄のΨ難」など。ミュージカルなどの舞台も数多く手がける。作・演出を務めた「サムシング・ロッテン!」は今年12月より公演スタート。

広瀬蒼乃

広瀬蒼乃

出版社でファッション誌や旅系の雑誌編集を経て、フリーランスに。可愛い子探しと、不摂生な生活を送りながらも健康ネタ集めと実践することが好き。昨年より念願の鎌倉暮らしを実現。

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