INTERVIEW「前に進めば自ずと夢は見つかる」はあちゅうが語る“飽くなき欲望の先にあるもの”

「前に進めば自ずと夢は見つかる」はあちゅうが語る“飽くなき欲望の先にあるもの”
2019.03.07

2018年に人気AV男優のしみけんさんとの事実婚を発表したブロガー・作家のはあちゅうさん。その後開設した、旦那さんとの夫婦生活をイラストで描いたインスタアカウント「旦那観察日記」が話題に。この大きな反響によって見つけた新たな目標や変化を語ってもらった。

人気ブロガーであり、作家として様々なメディアで活躍しているはあちゅうさん。
2018年7月に人気AV男優・しみけんさんとの事実婚を発表し、同年9月には夫婦生活をサルのイラストで綴ったインスタアカウント「旦那観察日記」を開設。

夫婦の生活を赤裸裸に描いた面白ろエピソードや、
しみけんさんとの愛が伝わる温かなエピソ―ドで
世の女性達の心をわしづかみに。
反響に反響を呼び、ついにエッセイ漫画として書籍化を実現した。

今まで文字を中心に発信をしてきたはあちゅうさんだが、「イラストには苦手意識があった」そう。
今回は、エッセイ漫画が大きな話題となったことで芽生えた気持ちや夢について語ってもらった。

毎日続けたからこそできた新たな夢

『旦那観察日記』の更新、いつも楽しみにしてます! まわりにもファンがたくさんいて、女性同士で話していると話題になることもすごくあります。

うれしいです。ありがとうございます。

 

2018年の9月から投稿を始められてわずか半年で書籍化されたわけですが、とてつもないスピード感ですよね。

早かったですね。そもそもイラストを投稿し始めた当初は、書籍になるなんて想像もしてなかったです。彼との生活はいつかコンテンツ化したいとは思ってましたけど、形にするとしたら文字のエッセイかなと思っていたので。

 

イラスト投稿を始めたきっかけは、iPadで絵を描く練習だったんですよね?

そうなんです。「はあちゅうサロン」というコミュニティを運営しているんですけど、そのメンバーで「#iPad芸人」というタグ発信をしている方がいて。見ていたらなんだか楽しそうで、「私も仲間に入りたいなぁ」と思ってiPadを衝動買いしたんです。でもみんなみたいに凝ったイラストや絵日記は描けないので、旦那をサルに見立てて描いて投稿してみたら、思いのほか反響があって。最初は1枚絵だったのを、連続投稿できる機能を活かして何枚か描くようになって、漫画になって……という感じですね。

イラストはご自身では苦手意識があったと他の記事で読みました。

今まで「絵がうまい」と言われたことは一度もないです(笑)。

 

どういったところが魅力で人気を得たと思いますか?

反響があった理由は3つあると思っています。まず1つ目は、旦那がAV男優という職種の特殊性もあって、「普段はどういう生活を送っているんだろう」と不思議に感じる人が多かったんじゃないかと。

たしかに、ミステリアスな部分はあるかもしれないですね。

読者さんのコメントを見ていても、「最初は興味本位で見ていました」という声も多かったですね。旦那自身もTwitterで発信はしているんですけど、エロに関する情報に特化してるから、日常的な発信は一切してきてないんです。

2つ目は、普遍的なことを描いているので、そこに共感してもらっているのかなと。「ウチの旦那とそっくりです」「ウチのカップルとすごく似ています」というコメントもたくさんきます。AVネタとかはウチならではですけど、人を大切に想うこととか愛する気持ちって、多少は違えど基本的にはみんな同じだと思うんです。

 

投稿を拝見していて、しみけんさんとはあちゅうさんののろけエピソードだったり、気持ちが温かくなるような内容の方が「いいね!」の数が多い気がします。

そうなんです。笑える系よりもラブラブ系の投稿の方が反響いいですね。

それに加えて、最近は“インスタ映え”にみんな疲れてきて、日常の発信や共感を得られる投稿が流行ってきているところだったので、タイミングも良かったんだと思います。

3つ目は、サルのイラストがよかったのかなと。単純な線だしすごくシンプルなんですけど、だからこそ親近感を感じてくれるみたいで。ファンレターにサルの絵を描いて送ってくれたり、「パン教室でサルの絵を描いたパンを焼きました」と言う写真を送っていただいたりしたこともありました。多分あの絵は誰でも描けるんですよね(笑)。

 

可愛いらしいし、生々しさがなくなる良さがありそうですね。とはいえ、半年前の絵と比べるとだいぶ進化してるような……?

「上手くなってきてる」とはよく言われます(笑)。
毎日4投稿はしてるんですけど、大体1日20枚以上は描いていることになるんですよね。それを半年間続けているのでどんどん進化していきました。

(初投稿時)

(現在)

毎日続けることがいかに大事だということがわかりますね。

絵の描き方を誰かに教えてもらったわけではないんですけど、描いているうちに自分の中で「こっちの方が可愛いな」とか、少しずつバージョンアップさせていきました。

 

シンプルな絵といっても、毎日の投稿を継続することってすごく大変ですよね。やはり反響があったからこそなんでしょうか。

先ほどもお話したように、絵を描き始めた時は「#iPad芸人」の仲間に入りたかっただけだったんですけど、好きと言ってくれたり、応援してくれる人が増えて、そうなったら「もっと多くの人に届けたい」という欲が出てきたんです。

イラストは苦手意識があったし、まさか漫画で書籍を出すことになるなんて思っていなかったんですけど、継続したことでそういった新しい夢ができて、そんな気持ちが芽生えてすぐ、書籍化のオファーが来ました。

 

「旦那観察日記」が反響よかったことで、ご夫婦にとって良かったことはなんですか?

旦那が単純に面白がってくれていることがうれしいですね。あと、今までどれだけTwitterや小説などで発信をしても届かなかった層の人達から『「旦那観察日記」好きで見てます』と言っていただいたりして、ファン層が広がったと思います。AV男優を職業にしている旦那さんとの結婚に対して否定的に見ていた方からも「イメージが変わって今は応援してます」というコメントをもらったり。やっぱり世間の目はAV男優という職業に対して、偏見がとてもあるので。

私の元には今でも、「AV男優は非人道的な職業だ」とか、「そんな奴らがメディアに出るな」といった誹謗中傷のメッセージが来ます。私の母にも脅迫めいたメールや手紙がきたり……。でも、AVの中で起きていることは全部監督の指示があっての演技ですし、男優は演者。実際は他の人と変わらない普通の人間なんですよね。そのことをもっと知ってもらいたいし、そういう偏見の壁がこの漫画を通してちょっとでも和らいでいけば、こちら側の声ももっと届くようになるのかなって。

 

今後の「旦那観察日記」では、どんな投稿をしていきたいですか?

いま妊活編を描いているのですが、子どもができたら出産編や育児編も描いていきたいですね。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」じゃないですけど、出産も育児もとても大変なことなのに、次の悩みが出てきたと同時に苦しかったことも辛かったことも忘れちゃうと思うんです。だから私はリアルタイムの配信にこだわりたい。「いまこれが苦しいです」とか、“他の人に広めていきたいことや伝えたいことを誰かに託す”という作業をやり続けたいです。

 

「妊活」ってデリケートな問題として扱われがちなので、友達同士でもなかなか話しにくいことかもしれません。妊活編の投稿も通報されるといったことがありましたね。

それで消されてしまった投稿があって。でもせっかくならちゃんと全部見てもらいたいと思っているので、それからはブログのアーカイブに残しています。

でも妊活編を発信したことで、身近な方から励ましや情報シェアの連絡もたくさんきました。普段は別の仕事をしている方が実は名前は伏せて不妊治療の啓蒙活動をしている、ということを知ったりとか、以前働いていた会社の先輩からも、「私も前に不妊治療してたんだよ。結局ダメだった(妊娠はできなかった)けど、はあちゅうは頑張って」と連絡をいただいたり。みんないろんなことを話してくれて経験をシェアしてくれるので、ありがたいですね。

自分が楽しくなかったら、結果が出たとしても幸せにはなれない

「継続したことで新しい夢ができた」とお話されてましたが、SHOWROOM配信者の中でも、「毎日配信を続けていくことで新しい夢ができた」という声もよく聞きます。でもすぐに結果が出なかったりすると不安になったり焦ってしまう人もいると思うんです。「どこまで続ければいいんだろう」と悩む人も多いんじゃないかと。

まずは、「続けていて、楽しいかどうか」だと思います。楽しくなくて結果も出なかったら自分を苦しめてしまうだけだし、たとえ結果が出たとしても楽しくなかったら自分が幸せになれないと思います。

私もまだテレビなどのメディアに声をかけてもらうことが少なかった時代に、大きな番組で「フライドチキンの専門家として出て欲しい」と依頼されたことがあったんです。ちょうどフライドチキンのPRのお手伝いをしていたからだったんですけど……。おそらくその番組に出れば、ある程度名前も売れたし、反響もあったと思うんですよね。でも、フライドチキンを広める活動を今後もしたいかって聞かれたら、全くしたくない。私は書くことや「作家」の定義をアップデートしていくことで有名になるのが幸せなのであって、フライドチキンの専門家として有名になったらむしろイヤだな、と(笑)。それでお断りしました。

フライドチキン専門家で有名になってしまったら、だいぶ人生の方向性が変わっちゃいますね。

目的と手段を履き違えたらダメだと思うんです。それを考えた時に、「今じゃないんだ」とはねのける勇気を持つことが大事だなと思いました。

 

名前が売れるからとなんでもかんでも飛びつけばいいというわけじゃないってことですね。かえって遠回りになってしまったり……。

人間って「有名になりたい」とか「お金持ちになりたい」という気持ちって少なからずあると思うんですよ。でも、自分の大切な主義と引き換えに得る名声や目先のお金って、のちのち自分を苦しめることになると思うので、自分が楽しいと思えることで努力できることを続けていくことが、幸せになれる夢の叶え方なのかなって思います。

 

具体的な目標がない人はどうすれば……?

それもやっぱり、自分が楽しいと思えることをやり続けることだと思います。「こんなことやってて大丈夫だろうか」ということでもいいから、やり続けることが自分を大きな夢へと連れていってくれるんじゃないかと。

例えば、片付けコンサルタントのこんまり(近藤麻理恵)さんがこんなに有名になったのも、大好きな片付けをとにかく続けたことからですよね。自身の本にも書かれていますが、とにかく小さい頃から片付け好きで、片付けのことばかり考えていた結果、いまや世界中で片付けを流行らせて、人の人生をも変えている。でも、もしこんまりさんが「片付けばっかりやっていても、食べていけない」なんて考えていたら、こんなに大きな成功はなかったと思うんです。だからまずは自分を信じて、楽しいことをやり続けることが大切。

 

たしかに、自分が幸せにならない“夢の叶え方”では、意味がないですね。でもつい向き不向きとか、現実的なことを考えてしまう人は多いかもしれません。

もしかしたら、“自分を信じる”ということが1番難しいことかもしれないですね。まわりの大人に「そんなんじゃ食べていけないよ」とか、「世の中甘くないよ」とか、厳しい言葉を投げかけてくる人もいると思うんです。でも成功者達の本をいくつか読んでいると、そういう(成功した)人はみんな自分を信じて、ポジティブに物事を考えて前に進んで、時にはリスクを抱えてきているじゃないですか。

だから身近にいる“そこそこの人生を生きている”否定的なことを言う人の言葉を信じるんじゃなくって、成功していて、自分が尊敬できる人の言葉を信じることが大切。自分で自分の心のメンターを見つけることって大事だなって思います。

はあちゅうさんは書籍を出版することだったり、小説を刊行するという小さい頃からの夢を叶えてきているわけですが、今の夢はなんですか?

ずっと本を出し続けて、作家の定義をアップデートしていくことです。何かを発信したり、本を書くことはずっとやり続けていきたいですね。

夢って叶った瞬間に次の夢が生まれると思うんです。本を出せたら「もっと本を売りたい」と思うし、本が売れたら「映画化してより多くの人に届けたい」となるし。そうやって飽くなき欲望があるからこそ、人は進めるのかなと思っていて。だから常に夢は叶いながらも夢を追いかけているということが、人間の一生なんじゃないかなと思います。

 

「飽くなき欲望」ってはあちゅうさんらしい言葉で素敵ですね!

実際にやっているのは、「家でずっと漫画を描いてる」という作業だし、やることはとてもシンプルなんです。でも、それを続けることが新しいステージに私を連れていってくれるんだと思っています。

編集からはあちゅうさんは”日常をコンテンツ化する天才”と
あらゆるメディアで言われているが、
今回書籍化も実現した「旦那観察日記」は
まさにその真骨頂だと感じた。
ただ、戦略的に思えて実は自身が想定してないところで
話題になったりもするのは、
インタビューでも語っていた
「自分が楽しいと思えるか」という軸をブラさずに
物事を進めているからではないだろうか。
「特別な何か」ではなく
「自分にできることは何か」を探っていかねばと、
改めて思わせてくれた。

Informationインタビューでもお話いただいた、「旦那観察日記〜AV男優との新婚生活〜」が好評発売中!
今まで投稿した漫画の他、書籍でしか読めない描き下ろしや、夫婦の対談記事なども収録。

 

はあちゅう

はあちゅう

ブロガー・作家。学生時代に始めたブログが人気になり、書籍を出版。その後も新たな作家の在り方を追究し、言葉を届け続けている。著作に「半径5メートルの野望」『「自分」を仕事にする生き方』「通りすがりのあなた」「仮想人生」など。月額課金制のマガジン「月刊はあちゅう」も好評。

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 広瀬蒼乃

広瀬蒼乃

出版社でファッション誌や旅系の雑誌編集を経て、フリーランスに。可愛い子探しと、不摂生な生活を送りながらも健康ネタ集めと実践することが好き。昨年より念願の鎌倉暮らしを実現。

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