
CDデビューを果たした永藤まなが「好きを仕事にできた理由」
SHOWROOMで目覚ましい活躍を見せた演者たちのインタビュー。
今回お話を聞いたのは、ピアノ弾きの〝まなまる〟こと、永藤まなさん。
今年3月30日、SHOWROOMから誕生したSHOWROOM RECORDSから自身初のカバーアルバムCD「まる。」をリリースした。
音大ピアノ科を卒業し、SHOWROOMは2016年10月から配信スタート。
リクエストに次々と応える「即興ピアノ」が大人気を博し、昨年のSHOWROOM AWARD2017では最優秀賞を見事受賞した。
今やSHOWROOMの代表的な配信者として大注目されている。
スペシャルコンテンツの記念すべき第一回目ではキングコング西野亮廣さん、SHOWROOM代表の前田裕二との対談ゲストとして登場したまなまるさん。
今回はCDデビューを記念し、より深堀りをしたインタビューに。SHOWROOM配信前と配信後ではどんな変化が生まれたのか?
彼女の想いや今後の展望について聞いてみた。
「クラシックは敷居が高い」というイメージをいい意味で壊したかった
まずはCDデビュー、おめでとうございます!SHOWROOM RECORDS第一弾としてのリリースですが、このお話を聞いた時の感想から教えてください。
ありがとうございます! SHOWROOMを始めた当初、「CDをリリースする」ということは、正直あまり考えてはいなかったんです。でも、配信を通じて音楽の楽しさを伝えたいと思いながらずっと頑張ってきたので、「今までの音楽活動やSHOWROOMでの配信を続けてきたことが、形になったんだ」と感慨深く、素直に嬉しかったです。
拝聴しましたが、どれも素敵なアレンジです。
収録曲のアレンジは、アレンジャーさんにしていただきました。SHOWROOMの配信では楽しんでもらうことが第一。喋りながらピアノを演奏しているので、どうしてもクオリティは…(苦笑)。なので、このアルバムは普段やっている配信のレベルアップバーションと思っていただければと(笑)。配信とはまた違った楽しみ方をしていただきたいです。
アルバム制作において、特にこだわった点はどこですか?
「誰でも楽しめるようなインストCDにすること」を目指して、選曲にはこだわりました。アルバムは全6曲を収録しているんですが、今までにあまりないピアノインストCDにしたくて。クラシック音楽はあえていれず、すべて聴きなじみのあるポップスにしたんです。
SKE48の「オキドキ」やゴールデンボンバーの「女々しくて」、石川さゆりさんの「津軽海峡・冬景色」など、ジャンルも様々ですね。
今回は配信中にリクエストがあった曲も入れてるんですけど、意外と演歌のリクエスト、多いんですよ! ピアノでアレンジするとまったく違うアプローチができるので、ピアノの可能性や面白さも届けやすいです。演歌はそういう意味でのスパイス要素がありました。知ってる曲が「あ、ピアノで弾くとこうなるんだ」というところから楽しんでもらいたいな、と。
クラシックって、どこかとっつきにくくて、敷居が高いイメージがあると思うんです。そのイメージをいい意味で壊したかった。今までクラシックに興味がない人にもCDを手にとってもらえるよう、(曲名を)パッと見て「なんか面白そう」と思えるものにしました。
確かに、クラシックに興味があったとしてもCDを購入するまでいかない、という人は多いかもしれません。
そうなんです。ジャンルなどにはあまりとらわれず、「永藤まなのアルバム」として興味を持ってもらうのが一番だなと。
ひとつのきっかけになれば、いいですよね。
はい。子どもから大人まで、垣根なくいろんな人に普段の生活の中で気軽に取り入れてほしいですね。クラシックの手の届かないような世界観をいい意味で削ぎ落としていきたいんです。
ポップスをアレンジするというのは私にとっても新しい境地だったのですが、SHOWROOMを始めて、「クラシックが流れるとまなまるさんの顔が思い浮かびます」と言われたり、「まなまるさんがきっかけで、インストのCDを初めて買います!」と言ってくれたりすることがあって。そういう声はすごく嬉しいですね。今後の活動も、いろんな世界を繋げる架け橋のような役割ができたらと思っています。
ポップスをアレンジして弾いたりするのは、SHOWROOMを始めてからですか?
はい、4歳の時にピアノを習い始めて、SHOWROOMをやるまではクラシック1本でした。ポップスは考えたこともなかったですね。遊び半分で弾いたことがあったくらいで。
「実は、ピアノの練習が苦手でした」。ピアノの魅力に改めて気づかせてくれたSHOWROOM配信
小さい頃から長い間、ピアノを続けてきていますが、イヤになったことや、辞めたいと思ったことはありますか?
たくさん、ありました(笑)。というよりも、辞めるきっかけがなく続けている感じだったんです。最初は純粋に楽しかったんですけど、10代になってからはほぼ義務でしたね(笑)。辞めどきがわからなくて。もちろん根底にピアノが好きというのはあったんですけど、「いつ辞めたらいいんだろう」ということばかり考えてました。正直、ピアノの練習も苦手でした(笑)。
ちなみに、その時の将来の夢は何でしたか?
「ピアニストになりたい」とは言ってましたけど、ピアノ人口って習い事からプロまで、比較的多いジャンルじゃないですか。上をみればキリがないし、そこを目指していくのが「正直しんどい」とは思っていました。だから学生時代は、学校の試験やコンクールで成績を残すことが目標になってしまっていましたね。負けず嫌いな性格なので、いい成績を残すために、努力はしました(笑)。でもテストやコンクールが終わったらそれで終わり。
卒業してからは具体的に何をすればいいのかわからず、とりあえずピアノを弾いてはいたけど「この先どうしよう」と、2年くらいずっと悶々としていたんですが、そんな時にSHOWROOMを紹介してもらって。「とにかくなんでもいいから挑戦してみよう!」と思っていた時期だったので、迷いなく始めました。最初はしゃべっているだけだったんですが「それじゃつまらないな」と思ってピアノを弾き始めて。
実際に配信を始めて、どうでしたか?
始めてすぐの頃は、知らない曲をリクエストされるとどうすればいいのかわからなくて大変でした。「なんで知らない曲ばっかりリクエストするの〜!」と半泣きでしたね。「明日までに練習してきます」と言って対応はしていたんですけど、やっぱりもっと私自身の引き出しを増やしていかなきゃいけないなと思って、今まで自分では聴いてこなかった曲をたくさん聴くようにしました。アイドルの曲も全然知らなかったんですけど、積極的に聴くようにしたり。そのおかげで自分の中で曲の幅がすごく広がったと思います。
ほかに、ご自身の変化はありましたか?
まず、以前よりピアノを弾く時間は増えました(笑)。やっぱり聴いてくれる方々がたくさんいるって大きいです。学生時代は自分自身が納得できればよかったんですけど、今はさすがに、たくさんのユーザーさん達が聴いてますし、ひどいものは聴かせられないな〜、と(笑)。何より、自発的に音楽をやるようになってから、音楽というものが「本当に楽しい!」と心から思えるようになったのは変化です。今までは「課題をこなす」 という感覚だったんですが、「ピアノ1本でこんなに表現ができるんだ」と改めてピアノの魅力も感じました。
自分が楽しめるのが一番ですよね。ピアノの弾き方や表現の仕方も変わりましたか?
すごく変わりました! それまでは、自分よがりの演奏でしかなかった。姿勢も悪かったし、動きもない演奏の仕方。今は、「聴いている人にもっと楽しんでほしい」という気持ちが強くなったので、手を思いっきり動かしたり表情をつくったり、視覚的にも楽しめるように意識するようになりました。
SHOWROOMを始めてから、自分の配信を見直しては「ここはこうしたほうがいいかな」とか、「ここは反応がよかったから続けよう」とか、客観的に自分を見ることが増えたんです。そのおかげで演奏中でも自分を俯瞰で見れるようになった気がします。それまで自分の演奏を録音して聴いたり、映像で見返したりしたかったことがなかったんです。ミスしているところも見たくなかったし、改めて見るのがイヤだったんだと思います。
その努力の結果、まなまるさんには、1年半でたくさんのファンがつきました。昨年は、「SHOWROOM AWARD 2017」で最優秀賞を受賞しましたね。
AWARDでの受賞は、ひとつの目標にもしていたので達成できてすごく嬉しかったです。20年以上ピアノをやってきて「自分がやってきたことが間違ってなかったのかな」、と。でも、ゴールではなく次に進むきっかけにしたいと思っています。それに、賞をとったのにいつの間にか消えて、「落ちぶれた」って思われたくないじゃないですか(笑)。そういえばそういう人いたね…なんてなったら悲しいです。
通過点にすぎないと。
メディアやイベントに出演する時も、そう思うようにしています。出演すること自体が目的なのではなく、出演することで次に繋げるにはどうするかを考えて、その場にいくようにしています。
先ほど話していた学生時代とまったく違いますね。
ですね。コンテストで賞をとっても、それが次に繋がることはなかったですし、そもそも繋げよう、と考えていなかったと思います。
配信を続けていたら、家族に指摘されるほど自分の性格まで変わった
ファンをここまで増やせたのは、何がよかったのでしょうか。ご自身でこだわっていることはありますか?
何より自分自身が楽しむことですかね。画面を通してでも、自分が楽しんでない時ってそれが伝わってしまうと思うんです。私が心から楽しむことで、ユーザーさんも楽しんでくれるのかな、と。
確かに、いつもすごく明るい印象です。普段からそうなんですか?
私、今では「いつも明るいね〜」とか、「テンション高いね」とか言われるんですけど、実は元々そんなにおしゃべりじゃないほうですし、声のトーンも今より3トーンくらい低かったんです(笑)。
意識して明るく振る舞っているうちに、自然と変わったみたいで。家族にも「そんなにしゃべる子だったっけ?」って言われます。
それはすごい変化ですね。
SHOWROOMの配信中は無音にならないように気をつけているんです。今まで、しゃべることについてそれほど重要視して考えたことがなかったので、試行錯誤でしたね。クラシックの演奏会ってほとんどお話することがないまま終わるので。
バイオリニストの葉加瀬太郎さんは、お話するイメージがありますよね。
まさにそうですね! 私は葉加瀬太郎さんを目標にもしてるんです。キャッチーさがあるというか。もちろん技術あってこそですけど、同じ技量があったとしたら、やっぱりお話や演出が面白いだとか、より楽しめる方を選びますよね? そういうスタイルを目指していて。SHOWROOMを通じてコミュニケーションに関してはすごく考えるようになりました。
「はい、じゃあピアノ弾きま〜す」と言って弾き始めても、誰も聴いてくれないと思うんです。「なんかこの子面白そう」くらいに気軽な感じでみんな集まってから真剣にピアノを弾くことで、「あ、こういうピアノも弾けるんだ」と思ってくれたらいいなと。
批判的な言葉に悩んでいた時期も…。キングコング西野さんとの出会いが転機に
SHOWROOMを始めて、辛かったことや、大変だったことはありますか?
SHOWROOMの配信についてではないのですが、クラシックの世界を中心に活動してきたので、SHOWROOMを始めることでそれまで応援してくれた方々、友人に批判を受けることもたくさんあって。伝統あるクラシック界の方からすると、SNSやインターネットの世界でピアノ弾きとして活動をする…ということが、ちょっと異端に見えたみたいです。「一体何やってるの?」とか、「そういうことする人とはもう一緒に仕事をしたくない」と言われてしまったり。
そんな批判を受けたこともあったんですね。それはどうやって乗り越えたんですか?
ちょっとモヤモヤしていた時もあったんですけど、SHOWROOMのイベントでキングコングの西野亮廣さんと対談する機会をいただいたことをきっかけに、そんな悩みはなくなりましたね。自分にとって、それは大きな転機になりました。
具体的にどんなお話をされたんですか?
西野さんも、SNSで炎上してしまったり、思わぬ形で批判を受けたりしがちじゃないですか(笑)。対談させていただいた時に、「自分もそういう批判を受けたりすることがあって…」ということをお話したんです。でも、「そういう人には言わせておけばいいんだよ」と優しく言ってくださって。その言葉ひとつで、一気に気が楽になったんです。
対談でたくさんお話を聞いて、「西野さんてすごい人なんだな」と心から尊敬できたので、そういう方からのアドバイスというところもあって。
それまで重く受け止めがちだったんですが、今後は何か言われても、ひとつの意見と受け止めて、「むしろそれをバネにして頑張ろう」と思えるようになりました。
アルバムの中にも、西野さんが手がけた絵本のテーマ曲(「えんとつ町のプペル」)も収録されていますね。
はい。もちろん、原曲がとてもいい曲というのもありますが、“自分にとっての転機になった曲”という意味でも選曲させていただきました。
SHOWROOMではお話いただいたご自身の“変化”があったり、CDデビューを実現したまなまるさんですが、今後の展望や夢、目標などは具体的にありますか?
具体的に「これになりたい」というよりは、今後もSHOWROOMを中心に、即興ピアノだったり、配信のおしゃべりだったり、きっかけはなんでもいいのですがピアノの楽しさや魅力を伝えていきたいです。
ピアノを弾く以外で配信する時に、何かこだわってることはありますか?
ピアノ配信は9〜21時の間しかできないのですが、それ以外の時間もユーザーさんのリクエストに応えることが多いです。年始もリクエストに応えて、書き初めをしてみたり。
ドライヤーをかけながら配信する〝ダイソンタイム〟がありますよね(笑)。これもユーザーが考えたものですか?
最初にやり始めた時のことは覚えてないんですけど(笑)。シャワーを浴びた後に、たまたまドライヤーをかけながら配信したら、その後も「今日はドライヤーかけないの?」と聞かれたりしたので、「あ、じゃあこれを定期的なものにしたら面白いかな」って思って。壊れたドライヤーだったんですが途中でダイソンに変わって、それから〝ダイソンタイム〟と名付けられました。
その発想が面白いですよね!(笑)。
とにかくいつでも何か面白いことはしよう、と心がけています!
では、まなまるさんにとってのSHOWROOMとは、一言でいうとどんな存在ですか?
SHOWROOMは、「改めて自分を向き合わせてくれた場所」ですね。もちろん、配信中はユーザーさんとも向き合っているけれど、最終的には自分と向き合ってるんじゃないかなって。SHOWROOMを通じて、いろんな人達とも出会えたことで、これからの自分をじっくりと考えることができたり、今のピアノの演奏スタイルにも繋がりました。
ありがとうございます。最後に、まなまるさんを応援しているみなさんに、メッセージをお願いします。
本当に、常にたくさんの方に応援していただき、感謝しています。いただいた機会やステージで、私が活躍できることが応援してもらった人への恩返しになるのかな、と思っています。そして、(永藤まなを)応援することに、絶対に後悔はさせません! なので、これからも応援していただきたいですし、ぜひ期待していてください!
——
「後悔はさせない」。
そう最後に力強く語ってくれたまなまるさん。
ピアノに対する想いの変化、
表現力の変化、
自身の性格や考えの変化…。
SHOWROOMを通じて様々な変化を成し得た彼女。
今後の更なる変化や活躍が楽しみだ。
〈まなまるさんがもっとわかる!一問一答〉
Q.好きな言葉は?
謙虚に、貪欲に、感謝な気持ちを持って。
初心は忘れず、謙虚さや感謝の気持ちは常に持っていなきゃ、と思っていて。でもそのなかで「チャンスはつかみ取る、挑戦する!」という貪欲さも持っていたいと思っています。
Q.自分の自慢できるところは?
常に明るくしゃべれます!
トークスキルはSHOWROOMで上がりました(笑)。人見知りは元々しないほうです。
Q.マイブームは?
水族館に行くこと。
あまり最近は行けてはないですけど、おすすめは沼津港深海水族館。めちゃめちゃ楽しいです! 深海魚、可愛いんですよ〜。
Q.ピアノ以外でやってみたい楽器は?
ギター。
でも指が届かなくて挫折しました(笑)。
Q.モチベーションを上げてくれるものは?
プリン!
特に焼きプリン。作ったりはしないです。
市販のプリンのほうが絶対おいしい!(笑)
Q.尊敬する人はいますか?
たくさんいる…。
音楽なら葉加瀬太郎さんとフジ子ヘミングさん。人間的な意味で、キングコングの西野さんもそうです。その方達と一緒に何かできるフィールドにいくことが目標です。
Q.自分の直したいところは?
イヤなことがあると態度に出ちゃうところ(笑)
Q.音楽家以外でなりたかった職業は?
幼稚園の先生。
実際になりたいと思って(試験を)受けたこともあります。子どもが大好きなんです。実をいうと受かったんですけど、ピアノを選びました。
Q.本や映画などで、影響を受けた作品は?
ジブリ映画が好きです。
〈撮影=中田陽子(MAETTICO)/取材・文=広瀬蒼乃〉
永藤まな
永藤まな(Mana Nagafuji)
1993年1月8日生まれ長野県出身。「ピアノ弾きのまなまる」として活動。音大ピアノ科を卒業し、SHOWROOMでは、2016年10月に配信スタート。〝即興ピアノ〟が話題となり、昨年、SHOWROOM AWARD2017で、最優秀賞を受賞。3月30日に初のカバーアルバム「まる。」をリリース。
広瀬蒼乃
出版社でファッション誌や旅系の雑誌編集を経て、フリーランスに。可愛い子探しと、不摂生な生活を送りながらも健康ネタ集めと実践することが好き。昨年より念願の鎌倉暮らしを実現。
現在、SHOWROOMでは新規イベントを募集しています!
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