
西野亮廣×永藤まな×前田裕二
SNSや動画配信サービスの発達で、過去に例がないほどに「誰もが発信者になれる仕組み」が整ってきている中で、夢の叶え方や人との繋がりのあり方、コミュニティの形は大きく変わってきた。
エンターテインメントの域を越え、ビジネス界においても新しい常識を築いた、時代の立役者ともいえるキングコングの西野亮廣さん。
即興のピアノ演奏配信で人気を得て、昨年のSHOWROOM AWARDで見事グランプリに輝いた、永藤まなさんこと〝まなまる〟さん。
この2名をゲストに迎え、弊社代表・前田裕二を含めた3人で
「現代社会においての夢・努力・絆のカタチ」をテーマに、
西野さん、前田2人によって作られたスナック「キャンディ」にて語ってもらった。
現代のコミュニケーション力は古き良きスナックに学べ
今日はオープンしたてのスナック「キャンディ」でのインタビューとなります。深夜2時をイメージしてまったりください。
西野亮廣さん(以下、西野):なんか絵になりますね、この店(笑)。まなまるちゃんはお酒飲むの? というか色っぽいねなんか!
永藤まなさん(以下、まなまる):(笑)。ありがとうございます。お酒、飲みますよ〜! もう25歳ですし。
(「ここにオルガン置いたら即興で弾けるから面白そう」、などとしばらく盛り上がる)
では、本題に入りますね。スナックは今回のテーマでもある「コミュニティ(絆)の形」のひとつですよね。そもそもスナックを作ろうとしたきっかけはなんだったんですか?
前田裕二さん(以下、前田):結構前のことなんですけど、テレビで西野さんと対談した時に「SHOWROOMはどんなサービスか」を説明するくだりで、「スナックに似ている」という話をして。スナックって、すごく美味しいお酒やおつまみを求めてお客さんが集まるのではなくて、人やコミュニケーション、コミュニティが来店理由なんですよね。
いつも集まる常連さんと話してほっとするとか、ママに相談したいことがあって、とか。エンタメの世界でも同じ現象が起きていて、いわゆる芸能の文脈でいう「クオリティ」、言い換えれば、芸術性は低いかもしれないけど、だからこそ自分が支えたいという気持ちになり、盛り上がる場所がある。
そうやってお客さん側、視聴者側を巻き込んでこないとコミュニティって盛り上がらないんです。スナックのママがつぶれてしまったら、そこにいるみんなで片付けしたり、ママの代わりに接客対応するようなイメージです。なぜだか応援したくなる、助けたくなる、って思わせるような。そこから、「スナックって面白いよね」と。じゃあ、作っちゃおうか、と(笑)。
西野:そうそう。スナック最高っすよね。最初は100「キャンディ」って言ってたんですけど、それじゃ叶っちゃいそうだからって、前田さんが、「西野さん。目標を、1000キャンディに変えましょう!」と突然言い出して(笑)。確かに、確実にやれるって思えることを目標にしてもつまらない。
前田:スナックで本も売ることにしたんですけど、本屋よりもスナックで売ったほうが、本って売れるんじゃないか?と西野さんが以前話していて。
西野:あー! そんなこと言ってたかも(笑)。そうそう、忘れてた。
前田:大体、飲みの場での話ですからね笑。でも毎回飲みの場で生まれるアイデアこそ面白くて、ずっとメモとってます。なので西野さんよりも、西野さんが言ってたことを覚えてるかもしれない笑。
まなまる:笑。
西野:以前、飲み屋で「前田さんの本がすごく面白いからおすすめだよ!」って話をしていたら、一緒に飲んでた相手がポチッとその場で購入していたんです。「あれ、これは飲み屋で本を売ったら売れるんじゃないかな?」と。本が売れたらスナックのママへの支援にもなる。「本を読みたい」にプラスして、「ママへ支援したい」という目的がひとつ増えるんですよね。
前田:本屋においては、コミュニケーションが設計されていないんですよね。というか、これも西野さんが言ってたことだ(笑)!
西野:やばい、覚えてない(笑)。
まなまる:私も、ファンがゼロのところからSHOWROOMの配信を始めたんですけど、やっぱり応援してくれる人達がいたことが一番でした。自分が頑張りたいって思った時に、応援したいって思ってくれた人の力が合わさった結果、夢に近づいている感じです。
前田:それに繋がる話なんですけど、1つ興味深い話があって。ぶっちぎりでNo.1の成績をあげている、ビール売り子の話。知人が、その子に、「秘訣はなんなの?」と聞いたら、「お客さん一人あたりの滞在時間を長くすること」と答えたそうです。
まなまる:へー! なんでですか?
前田:普通、数をたくさん売ろうと思ったら、なるべく多くの人と接触しようとするじゃないですか。でも逆で、通常、一人あたり10〜15秒くらいのところを、その子は「45秒は使う」と。普通の3倍なので、いろいろくだらない話とかもしますよね。そのうちに、お客さんと売り子の間に強い関係値や、絆が出来上がってくる。そうなると、絶対その子からしか買わないんです。その時、ビールの銘柄なんて関係ないんですよね。
西野:すごく面白いですね。
前田:ビールが欲しくて買う、のではないんです。もはや目的が変わってます。おそらく、売り子がオレンジジュースを背負って現れても、買うのでしょう。それもスナック的だなと思って。そういった、丁寧なコミュニケーションによる顧客の「常連化」が、結果につながっているんですよね。
西野:支援のシステムって面白いですよね。絵本「えんとつ町のプペル」を出した時に、絵本は無料公開もしたんですけど、「タダで読ませてくれたんだから西野を喜ばせるにはどうしたらいいか」から、「そうか買えばいいのか」と読んでくれた方達が勝手に考えてくれたんです。この時、もはやプペルとかどうでもよくて(笑)。なんならもう一度読んでるし。あの手この手で売り方は考えてはいたんですけど、「応援したい」「喜ばせてあげたい」という気持ちから本を買ってくれた方がいたのは想定外でした。
アイドルのお母さんも主役に!?絆から生まれる新たな連鎖とは
西野さんは、最近ではレターポットというサービスも始めましたよね。そこでも想定外なことはありましたか?
西野:ありますね。スタートして1カ月くらいたってレターが2万通くらい届いているんですけど(※インタビュー当時)、誹謗中傷が一件もないんです。キングコングの西野に誹謗中傷がないって異常事態ですよ。
まなまる・前田:(笑)。
西野:文字って無限にあるって思うとつい汚い言葉を使ったりするものだけどレターポットは有限。例えば、残り10文字あるとして、これを「汚い文字に使うか」「感謝の文字に使うか」の二択になると後者を選ぶものなのだな、と思いました。言葉って元来、美しいものというか。
前田:なるほど。あと、ユーザーがサービスの使い方を新たに考えてくれますよね。
西野:そうそう、レターポットをリターンに使うとか! クラウドファウンディングで、3,000円支援したらリターンをレターポットでレターを送る、というシステムで使ってくれたり。
まなまる:SHOWROOMでもそういう想定外なことってありましたか?
前田:ありますね。最初アバターにいた人が、配信者になっちゃうとか。例えば、配信している子のファン、つまりアバターの中にその子のママが紛れこんでたりするんですけど。アバター同士の間で「お母さん」って言われるようになって、そのうちそのお母さんが配信し始めるという。
西野:スナック通っているうちに自分がママになっちゃったみたいな?
前田:そうそう。そもそもアイドルのお母さんって、「自分もアイドルになりたかった」って方が多いんですよ。でも40、50代の普通のお母さんがいきなり配信し始めても、普通は、そう簡単に人は集まらないじゃないですか。でもこの場合だと、子のアイドルのファンコミュニティがごっそり、迷わずそのお母さんのルームに移動するんです。それって新しいコミュニティのあり方だな、と。
まなまる:そういうの本当にSHOWROOMではありますよね。私の配信を観てくれているファンの中でも配信し始めた方、います。
前田:まさに。サービスを始めた当初は、例えばまなまるちゃんだったら、「ファンがまなまるちゃんのショーを観る」で完結していたんですけど、まなまるちゃんのファンの子が、今度は新たに演者になって、まなまるちゃんの宣伝をしたりする、という文化が新しくユーザー間で生まれました。本当に、すごい絆ですよね。まなまるちゃんは、ファンとのコミュニケーションの中で絆を感じることはある?
西野:絆の権化でしょ、まなまるちゃんは。
まなまる:笑。もちろん絆は感じますね。やり始めた当初は、1時間配信してもアバターが100人とかで、コメントも7人、という状況だったんですが、今はありがたいことに、4,000〜5,000人くらいはいていただいているんです。私自身だけの力ではそんなに広められなかった。みんなが繋いで、広めてくれてここまで来れたんです。
クラシックの世界ってすごくコミュニティが小さいんですね。大学在学中も、それなりに結果も残していたはずなのに、卒業したら仕事が本当になくって。SHOWROOMを始めたら色々変わりました。可能性もチャンスもみんなのおかげでたくさん広がりましたね。でも一度「もうダメだ」という経験した分、「あとはやるしかない!」といういい意味で捨て身な気持ちで今はチャレンジできています。
西野:そもそもSHOWROOMを始めたきっかけはなんだったの?
まなまる:たまたま、事務所の方に紹介してもらって。「やってみたら?」と。最初の2〜3回はしゃべっていただけなんですけど、人と同じことしてもつまらないなと思って、「じゃあピアノでも弾いてみようかな?」という感じで始めて、今に至ります。でも自分の発言がうまく伝わらないこともあって。そういうのは落ち込んだりはしますね。
前田:そういった批判や炎上が日本一得意な人がいますよ、まなまるちゃんの横に。
西野:笑。でもまなまるちゃん、落ち込んだりするんだ。
まなまる:そうですね。でも配信している間は、凹んだ姿を相手に見せちゃいけないなって思って、相手のペースに合わせるのではなく「自分がやりたいことをやろう」というのは心がけています。
西野:すごいな〜。ベース賢いよね。
応援してもらいたいなら「前向きなへたくそ」であれ
みなさん、ファンやまわりの方が応援してくれたり、支援してくれたりすることが大事だというお話をされていたと思いますが、そういう存在になるために努力していることはありますか?
西野:んー、嘘はつかないようにはしてますね。思ってもないことは言わない、書かない。
まなまる:私は観てくれている人全員に、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるようにはしてるかな。
西野:あと応援されるのにチャーミングさって大事ですよね。「助けて!」とチャーミングに言える人。
前田・まなまる:確かに。
西野:チャーミングといえば幻冬舎社長の見城さん。こないだ、前田さんと2人で幻冬舎の会議に出たんですよ。仕事でもないのに。
前田:でも一番本気で考えているのは我々で(笑)。見城さんは本当に、「前向きな余白」がある人ですよね。何もしてないのに助けを請う「後ろ向きな余白」を持っている人もいるんですが、見城さんは常に幻冬舎のことを、日本の出版の未来のことを、著者のことを、脳がちぎれるほどに考えているのを、僕らは知っている。人間的な繊細さがあるというか。だから「なんとか助けになりたい」、って思えるんですよね。
西野:あんなに強面なのに、ですよ。最初前田さんと一緒に見城さんに会ったとき、ごっりごりのサングラスをかけてきて。僕が今まで見たことのあるサングラスの中でも、一番でかかったですよ。
前田:扉を思いっきりバーーン!って開けてきてね。で、何を言うかと思ったら「西野、前田、ありがとう」って(笑)。
まなまる:笑。応援したくなりますね。
西野:「前向きなへたくそ」も大事だよね。
まなまる:あ、わかります。たまに料理しているところを配信するんですが、上手にできちゃったりすると、「ちょっと失敗したほうが可愛いよ」ってファンの方に言われました(笑)。わざとそれをやるのはまた違うとは思いますけど。
前田:頑張りたいって気持ちが見えることが大切ですね。
極端な環境に身を置かないと〝天才〟にはなれない
とはいえ、思い通りにいかなかったり、どうしても挫折しそうになったりすることも、あるのかなとは思うのですが。みなさんは何をモチベーションに頑張れるんでしょうか。
前田:西野さん、そういうのなさそう(笑)。
西野:ないですね(笑)。基本、こけてもいいんですよ。というかこけるのは前提。
前田:西野さんは、「一歩踏み出す」という概念自体がない。
一同爆笑
前田:みんな一度立ち止まって、「俺はここで一歩踏み出すべきなのか?」と考えたりするじゃないですか。とても真面目なんです。でも、西野さんや、ホリエモンさんとかもそうなですけど、いい意味で不真面目なのかな、と。
西野:僕、天才になりたいんですよ。そうなるには極端な道を選ばないと。「極端な環境が極端な才能を生む」って思っていて。例えば、鳥も飛ばないとならないから羽根が生えたわけで、生物は環境に支配されているわけです。まずは極端な環境をつくってしまえばいいのかと。ケーキ屋さんだったとしたら、売って余ったお金で新作のケーキを作ってまた売る…というのが普通だと思うんですけど、それじゃそこそこの人気は得るかもしれないけれど、天才にはなれない。
このスナック「キャンディ」は、飲食代0円にしたんです。飲み屋で飲食代0円って(笑)。普通はないです。その代わり「ゲロしたら10万円」、ていう決まりを作って。極端なルールにしたからこそ、生まれたアイディアです。悪しきとされていたゲロが支援になる、という(笑)。
まなまる:SHOWROOMの配信でもそうかも。配信ボタンを押してしまったら、もう配信するしかないんです。「やろうかな」と迷ってても始まらないから、とにかくボタンを押してしまう! 押すのは簡単なので。でも、始まったら「その中で何をやろう」って一生懸命考えます。
前田:制約の理論ですよね。僕も大学生の時、どうしても英語が勉強したくて、でも留学するお金の余裕もない。それで、英会話教室に行こうと思ったら入学金がとにかく高くて、当時の経済力ではそれも無理。それで、その英会話教室の先生になるというアイデアを思いついたんです。
西野・まなまる:え!?
前田:先生になったら、勉強するしかないですから。TOEICや英検について教えなくてはいけないのに、TOEICテストを受けたこともないという…。
まなまる:すごい!
西野:そういえば、まなまるちゃんって今25歳だよね? 僕も25歳の時、人生の中で一番大きなハンドルをきった時だったんですけど、それはひな壇をやめたこと。タレントの仕事の9割は「ひな壇」なんですけど、その9割を捨てました。あえてそういう極端な道を選んだんです。その先にあったものが、「絵本作家」でした。
やるしかない状況を自ら作り出す…ということですね。そもそもやりたいことが見つからない、って人はどうすればいいんでしょう。
前田:それ、本当によくある質問ですね。
まなまる:それは前の私です。さっきも話しましたけど、卒業してから仕事がなくって。2年間くらいは「これからどうしよう」と思いながらもあまり自分では動いてなかったんです。そこでSHOWROOMに出会ったからよかったんですけど。でも、「どうにかしなきゃ」と思って今の事務所を紹介してもらったことでSHOWROOMを知ったので、やっぱり行動をする、ということが大事だと思います。
西野:あと、入ってくる情報を変えること。ダイエットするとか。
え、どういうことですか?
西野:ダイエットしたいと思った時、食べるものが変わったり、ひと駅分歩いたりすることでいつもとは違った情報が入ってきますよね。お酒も控えたとしたら、その時間を他のことにあてよう、とかするじゃないですか。それだけでもいつもの毎日に変化がつきますよね。あともう一つは、お酒で酔っぱらうこと!(笑)。飲むと気が大きくなるから、言うことが大胆になるでしょ(笑)。
なるほど!(笑)。ではやりたいことが見つかったとして…。SNSが普及した今の時代において、そもそも夢はどうやって実現していけばいいのでしょうか。
西野:著作権を曖昧にしちゃえばいいのかな、と(笑)。今までは作り手とお客さんがハッキリと分かれていましたが、今は誰もが発信できる時代ですよね。受信するだけでは耐えられなくなってきた。であればまわりに夢を共有して、「みんなであそこに行こうよ」と進んだほうが目的地にたどりつきやすい。自分の権利なんてフリーにしてしまって。
前田:とにかく、仲間をつくることが大事ですよね。
まなまる:みんなで一緒のほうが、夢が叶った時の喜びもわかちあえますよね。夢を叶えた本人だけじゃなくて、応援している側も喜べる。「最後まで一緒に頑張ろう!」っていう気持ちも生まれる。
西野:確かに! クラウドファンディングがまさに、現代を表している。資金を集めるという発想ではなく、一緒に夢を実現する人を募ることで、結果、資金調達の成功可能性も上がるんです。
ありがとうございます。では最後に、今後の展望を教えてください。
西野:打倒、ディズニー!
前田:そこは、譲らず(笑)
まなまる:夢は大きいほうがいいってことですね(笑)
〈撮影=良綱(PEACE MONKEY )/取材・文=立花あゆ/編集=広瀬蒼乃〉
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西野亮廣/永藤まな/前田裕二
立花あゆ
女性誌やwebを中心に美容や著名人、有識者などのインタビューなどの企画撮影のディレクションから記事作成までを行う。一児の母。
スナック「キャンディ」非公開
西野さんと前田が共同オーナーを務める、おとぎ町のスナック。
五反田の他、大阪、名古屋、札幌、沖縄と現在5店舗を展開。住所は非公開。
「お客さん自らお酒をつぐ」「飲食代ゼロだけどゲロ吐いたら10万円」など
斬新なルールに注目。店内にはえんとつ町のプペルのアニメーションが流れている。店内では本も販売。
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